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「三鷹の映画人Vol.3 女優 渡辺真起子特集」

映画祭レポート

 最終日、午後からは「三鷹の映画人Vol.3 女優 渡辺真起子特集」です。「三鷹の映画人」は、三鷹にゆかりのある映画人に焦点をあて、特集を組むプログラムで、今年で3回目となります。上映作品は『愛の予感』(2007年)、『チチを撮りに』(2012年)の2本です。
 『愛の予感』は全編ほぼ台詞がなく、繰り返される日常を描くというなかなか目にすることのないタイプの作品、『チチを撮りに』は爽やかな笑いと感動をもたらす、きっと誰もが共感できる作品で、この二本立てはなかなか絶妙なプログラムになったと思います。
 渡辺真起子さんは、10代を三鷹で過ごしたということで、三鷹市立南浦小学校、三鷹市立第一中学校の卒業生です。1986年にモデル活動を開始し、1988年に女優デビュー。数々の国際映画祭での受賞作品に出演し、ご自身も受賞されています。今回上映した『愛の予感』、『チチを撮りに』も国際映画祭で受賞しています。正に、国際的実力派女優の渡辺真起子さんが三鷹に凱旋!ということで、大いに盛り上がりました。
 上映終了後のトークでは、いよいよ渡辺真起子さんが登壇です。聞き手は当映画祭実行委員&アドバイザーの鶴田法男監督が務めるという、今年も贅沢なものとなりました。
 まずは、渡辺真起子さんと鶴田法男監督がどこで知り合ったかというお話。2009年のゆうばり国際ファンタスティック映画祭の審査員でお二人はご一緒され、入江悠監督の『SR サイタマノラッパー』にグランプリを与えました。また、鶴田監督作品で一昨年の当映画祭でも上映された『リング0 〜バースデイ〜』との併映で公開された『ISOLA 多重人格少女』にも渡辺真起子さんは出演されているというニアミスもあったそうです。
 次に、メジャーやインディペンデント問わず様々な作品に出演するスタンスの話や、元々役者志望でモデルから女優になっていった話をしていただきました。三鷹での思い出話もいろいろとされて、生まれて初めて学校をさぼって映画を観に行った映画館が三鷹オスカーであったという話などを披露していただきました。「人生の選択が始まった時期」を三鷹で過ごしたということで、三鷹についての思い出は尽きないということです。更に、キャリアのこと、「役者」のこと、高倉健さんのこと、好きな映画のことなど、実に様々な話が飛び出しました。
 今年の4月に渡辺真起子さんのお母様が亡くなられとのことですが、昨年末、お母様にとって最後の年の瀬になると思い、弟さん家族など皆さんで『かぐや姫の物語』を観に行かれたそうです。人生を駆け抜けたお母様にかぐや姫の姿が重なるのではないかと思い観ることにしたそうです。かぐや姫が月に帰るラストシーンを観てお母様を送り出す心の準備ができたような気がして、この作品にして良かったと思い号泣したそうです。鑑賞後、お母様に感想をお聞きしたら「まあまあね」との返答だったというお話には、場内大きな笑いが起きていました。
 トーク終盤、元三鷹オスカー番組編成で鶴田監督のお兄様の鶴田浩司さんと、『チチを撮りに』の中野量太監督も会場にいらしていたので、登壇いただき、お二人も加わってのトークとなりました。  中野監督は、渡辺真起子さんに出演していただくという前提で、お会いしたこともない渡辺さんに、不思議と断られるというイメージはなく、『チチを撮りに』の脚本を当て書きしていたそうです。一方、渡辺さんは、東日本大震災の直後に瀬々敬久監督の『アントキノイノチ』の撮影現場に行き、「自分の仲間がここにいた」という安心感を得たそうです。震災によって人生が大きく変わってしまった方々がいる中で、自分が元気でいるのであれば、誰かが何かを作りたいと言うのなら、できることはなんでもやろうと、来たものは断らないと決めたそうです。ここで驚くのは、中野監督から渡辺さんに『チチを撮りに』の出演オファーを出そうとしていたのが、2011年3月11日だったということ。しかし、地震が起きてしまい、オファーは出せず、こんなときにフィクションを撮っていいのかという思いになったそうです。時間をおいて、やはり家族の絆を描くことで、今こそこういう作品を作るべきだと思い直し、あらためてオファーを出したということです。このようなタイミングから生まれた『チチを撮りに』だったんですね。  渡辺真起子さんの出演時間は短いのに、全編を通して渡辺さん演じる母親の姿が「見えている」作品だという話もあり、『チチを撮りに』という作品の成功の鍵がそこにあったのではないかと思います。
 「三鷹コミュニティシネマ映画祭、この先も長く続いてくださったらいいなということと、自分が何かを志した土地で自分の映画を皆さんに観ていただく機会があるとは思っていなかったので、本当に嬉しく思います。今日はご来場いただきありがとうございました」と渡辺真起子さんからご挨拶いただき、トークショーを締めくくりました。 text by 神原 健太朗

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