映画祭レポート2015

レポート#05 11月23日(月・祝)『野菊の墓』『ぼくらの七日間戦争』

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「時代を彩るアイドルたち」平成27年度文化庁優秀映画鑑賞推進事業「午前十時半のワンコイン映画祭」(2)

『野菊の墓』『ぼくらの七日間戦争』
 「僕ね、若い頃、三鷹より西には陸がないと思っていたんですよ」…三鷹と聞くと、高校時代の塾の先生の、こんな言葉を思い出します(ちなみにその塾は立川にありました)。中央線の真ん中、多摩地域と23区のほぼ境目に位置するこの三鷹という街で、私は、映画を見たことがありませんでした。
 今でも多くの人に愛される映画館「三鷹オスカー」が閉館したのは、私が生まれた平成2年。それから四半世紀になる今年、私は初めて、三鷹で映画を見ました。その機会を与えてくれたのが、この「三鷹コミュニティシネマ映画祭」です。
 もう一度、三鷹に映画館を。そんな想いから生まれたこの映画祭は、今年で6回目を迎えました。その最終日に、私は物販の店番兼観客として参加し、一日ながらとても楽しませていただきました。本当に、「楽しむ」という表現がしっくりくるような映画祭でした。
 まず会場内に足を踏み入れてみますと、広々余裕を持って座れるよう配慮された座席と、ゆっくり飲食できるテーブル席が目に入ります。受付横の売店で売っている食べ物(これがまたどれも美味しいのです)とお酒を持ち込んで、このテーブルで映画を見たら、さぞかし気持ちがよいだろうな…と思いました。
 この気持ちよさとはおそらく、家庭で映画を見るときの、あのたまらない気楽さや解放感であり、それを味わうことが可能な映画館的空間とは、非常に貴重な存在ではないでしょうか。蓋付きの飲み物さえ取り出せないストイックな(?)劇場もある一方で、こういった試みを行う場所もある。そういった「映画を見せる場所」の持つスタイルが多様化し、共存することで、人々の映画体験はより豊かに、映画と観客の距離はより縮まっていくのだと思います。何にせよ、「映画を見せる場所」そのものがもっともっと増えていくことを、あらためて願うところです。
 客席のよさ、売店の食べ物の美味しさと来て、私が最も興奮したのは、映写機でした。テープで区切られてはあるものの、同じ会場内、自分のすぐ目の前に映写機がある! こんな貴重な機会に、子どもも大人もはしゃいでしまいます。暗闇の中、カタカタカタ…とフィルムを送る音をすぐ側に聴きながら、映画を見るひと時…。実に感慨深いものがありましたが、フィルムの時代を生きて来られた方たちには、なおのことでしょう。
 この映写機で今回私が見たのは、「時代を彩るアイドルたち」というプログラムの、松田聖子主演『野菊の墓』と、宮沢りえ主演『ぼくらの七日間戦争』です。アイドル出演の映画は普段あまり見ませんが、とても面白く拝見しました。

 特に『野菊の墓』、初めは聖子ちゃんが可愛くて楽しく見ていたのですが、途中から、あまりに切ない展開に涙が止まらなくなってしまいました。そんなとき、フィルムがあまりに古いために映写トラブルが発生し、上映が一時中断という事態に。他のスタッフの方が対応に追われる中、私は客席で今年一番の号泣をしており、「うわ、あの人スタッフなのに、呑気に客席で号泣している…」と、スタッフの方にもお客さんにも思われている気がして、不思議ないたたまれなさを感じたのでした。
 映画祭を通して印象的だったのは、お買い物帰りに立ち寄ってくれたおばあちゃんや、お母さんが用事を済ませている間に映画を楽しむ女の子、また上映前に流れる、映画祭会場周辺のお店のPR映像…すなわち、この映画祭が、まさに「コミュニティ」そのものであると感じられたことです。かつて映画館がそうであったように、映画祭とは、人と映画と地域が出逢う場なのだと、実感した一日でした。
text by 髙木 愛

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