映画祭レポート2016

映画祭レポート#5 11/23(水・祝) 市川崑監督特集 『野火』

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 晴れた日曜日の朝、開場10分前までは思ったより静かな感じでしたが、時間が迫るにつれ徐々にお客様は増えていきました。そして開場すると、あれよあれよという間に人は増え、エレベーターから降りてきた人が、次々と会場に吸い込まれて行きました。貴重なフィルム上映のアドバンテージが大きいのはもちろんですが、初日の『おはん』のような名だたるキャスト陣や唯一無二の公式記録映画としての『東京オリンピック』、それらに負けないくらいの入りになりました。市川崑監督の作品の底力を感じずにはいられません。

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 意外だったのは、戦争映画なのに、年配の女性のお客様が多かったことです。確かに市川崑監督の作品自体が女性にも人気が高そうな気もしますが、それでもそれなりにエグい場面はありますから、やはり意外です。もちろん男性客も見受けられましたし、年代に関係なく映画ファンの方もいらっしゃるようでした。
 昨年公開された塚本監督の「野火」がかなりの評判で、実際私も鑑賞後、市川崑監督の作品にも興味が湧きました。塚本監督も市川作品へのリスペクトをインタビュー等でも語っていますから、ちょっと間は空いてますが、このフィルム上映のチャンスに注目するのは映画好きにとって自然の成り行きです。塚本作品と基本的に同じストーリーラインですが、描写など大きく違うところもあり、上映されている時代性も含め、頭の中で思い出し対比しながら観ていました。また自分が同い年の頃ならこの作品を観ることはまずないだろうというかなり若い方もいて、どんな感想を持たれたのか興味深いです。

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 上映中はほんとに静かで、やはり皆さん、このストーリー展開を固唾を呑んで観ていられたのでしょう。モノクロなのが却って寂寥とした雰囲気を醸し出しているのが鮮烈でした。監督はCMのディレクターもされていて、CMでも名作を残していますが、目に焼き付くような印象的な場面が多かったです。

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 それにしてもこの女性客の多さは「戦場映画」であっても「戦闘」がない、心理描写が多いからでしょうか。船越英二の主演というのも効いています。船越英二といえばテレビの学園ものの校長先生役だったり、殿様の出てくる時代劇の「じぃ」のイメージですが、若い頃はこれ以上はない「ヤサ男」、まさにヤサ男の中のヤサ男だったんですね。この作品での演技が評価されご自身の出世作になったのも頷けます。女性客の多さはここにもあるのでしょうか。ミッキー・カーチスもこの当時の本職はロカビリー歌手だったと思いますが、こんなに味のある演技をされていたとは、既に玄人はだしだったのですね。
 今さらながら名作映画というのは、新鮮な発見が多いです。フィルム上映なので尚更なのでしょう。

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Text by 今泉健