映画祭レポート2016

映画祭レポート#4 11/20(日) 市川崑監督特集『東京オリンピック』

report_20tokyoorimpic

  「11月20日は、市川崑監督のお誕生日なんです。監督が生きていたら今日で101歳だったんですね。」
 鶴田浩司さんの興味深いトークで上映会が始まりました。
 かなり埋まっている客席は、やはりご年配の方が多いのですが、お若い方の姿もちらほらと見られます。

20tokyoolympic (2)

20tokyoolympic (4)
 今でも多くの人の心に生き続ける名画座三鷹オスカーで作品編成をされていた鶴田浩司さんが、「一日だけ復活!!」上映の為に選んだ一本は、市川崑監督のドキュメンタリー映画『東京オリンピック』でした。
 「この作品は芸術性を重視しているというか、ほとんど説明がないんです。ですから、檀鼓太郎さんのバリアフリー用の解説を聞きながらの方が分かりやすいかも知れません。」
鶴田さんのそんな一言に、受付の音声ガイド用ラジオを借りにいくお客さまもいらっしゃいました。

20tokyoolympic (1)

 私は、バリアフリー活弁士付き上映を一度体験してみたかったので、すでにイヤホンを装着し、檀さんの「この映画を解説するために、たくさん調べ物をしたお話」も聞いておりました。
 イヤホンから流れる声には、まるで自分のために語ってくださっているような優しさを感じます。
 目を閉じて映像を想像していると、「こんな感じだろうか、それとも……」次々とイメージが浮かんできます。
 さらに、普段はあまり意識しない館内の雰囲気や周りのお客さまの息遣いのようなものまで、とても身近に感じられるのです。
 視覚に障害のある方の映画空間を、ほんの少しですが、体験させていただいたように思いました。
 映画の楽しみ方は一人一人違っていて、それでも一緒に味わえるものがあるって素敵ですね。

4.東京オリンピック

 さて、1964年の東京。アジア初のオリンピック開催都市に選ばれたことは、この時代の人々にとって、本当に大きな出来事だったのでしょう。上映中に、客席から拍手が聞こえるシーンもありました。
 『東京オリンピック』は、いわば「伝説」の記録映画だとあらためて感じるひとときでした。

 上映終了後、何人かのお客さまに感想を伺ってみました。特にお若い方には、なぜこの映画を観ようと思われたのか、その理由を教えていただきました。
 「両親から話を聞いて観たいと思っていた」「ロゴのデザインの素晴らしさに惹かれて」「時期的に東京オリンピックに関心がある」「めったに観る機会がないと思った」「この時の東京オリンピックのことを何も知らないから」などのご返答をいただきました。
 ご年配のお客さまからは「とにかく懐かしい」というお声が多く、「思い出が次々と蘇ってきた」「今見ても感動する」という方もいらっしゃいました。
 「この映画祭の全部が素晴らしい!」と、大変ありがたいお言葉をくださった方は、午前の作品(『ぼんち』)と続けて二本ご覧になったとのことでした。(『東京オリンピック』だけでも170分の長編なのに!)

20tokyoolympic (3)
 上映後、スタッフ控室で、机の上の一枚の新聞が目に留まりました。詩人の谷川俊太郎氏に関する記事でした。この『東京オリンピック』の脚本や撮影に谷川氏も参加されていたこと、彼が撮影して使用されたシーンは、たくさんの風船が空へ飛んでゆくあの詩的な光景だったことを、初めて知りました。

 映画には、魅力的な逸話が散りばめられているんだなぁ。
 そんなことを思う映画祭二日目の夜でした。

Text by 佐藤聖子