映画祭レポート2016

映画祭レポート#1 11/19(土) 市川崑監督特集 『おはん』

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  三鷹コミュニティシネマ映画祭の初日。

 朝早くから降り続いていた雨が、三鷹駅前の歩道にいくつも水溜りを作っていました。

 冷たく強めの雨で足もとの悪い中、お客さまは来てくださるのだろうか、少しでもたくさんの方が来て下さったらと、祈るような気持ちとそれ以上に何かが始まるわくわくする気持ちで胸がいっぱいになりながら、映画祭の会場に着きました。
 2ヶ月前、ツイッターでなにげなく目に留まった「三鷹コミュニティシネマ映画祭のボランティア募集」という映画祭スーパーバイザー鶴田法男監督のメッセージ。どこか心魅かれて詳細ページを開きました。
 「三鷹に映画館を」「三鷹オスカー」「35mmフィルム上映会」。そこには、私にとってとても魅力的な言葉が並んでいました。特に「三鷹オスカー」は、映画に夢中になっていた学生時代によく訪れた映画館です。
 フランス映画の美しさも、「監督」という切り口で観るという鑑賞法も「三鷹オスカー」に教わりました。仲良しだった亡き父とも通いました。映画館のお隣にあったパン屋「好味屋」さんの美味しかったソフトクリームのモカ味までがよみがえってきました。
 そうして、気がついたらもうボランティアに応募していました。
 三鷹コミュニティシネマ映画祭は、今年で7回目。三鷹市の住人でない私は、今まで映画祭の存在を知らなかったことが悔やまれます。
 私が参加したボランティアの仕事の内容は、仕事別にチームで分かれていて、それぞれに応じてできる範囲での仕事なので難しいものではありません。映画祭実行委員のみなさんが中心となってまとまり、スタッフとして誰もが真剣なまなざしで程よい緊張感を持ちながら、みな黙々と準備を進め、開演時間を迎えました。

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 特に映画祭の影の主役である映写チームのスタッフのみなさんは、当日以外にもたくさんの時間をかけて準備し、また本番でも一番責任の重いポジション。その職人的な仕事ぶりに見とれてしまいました。

 初日の上映一作目は市川崑監督特集「おはん」。

1.おはん

 「おはん」は宇野千代原作の1984年に公開され、日本アカデミー賞をはじめたくさんの賞を受賞した名作です。妻のおはん(吉永小百合)、芸者のおかよ(大原麗子)というタイプの違うふたりの女性に魅かれる古道具屋の優男(石坂浩二)のお話。大正の関西の町並や生活がしっとりとした陰影の映像美で描かれています。
 「おはん」を見ようと、大粒の雨が降りしきる中をわざわざ足を運んで下さったお客さまが、ひとりふたりと会場に入っていかれるのを見ながら、きっかけや思いは違っても、本当に映画が好きな方がいらしてくれているのだなと、チラシをお渡ししながら感謝の気持ちで胸が熱くなりました。

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 会場には人数は少ないものの、映画が作られた同じ時代を生きてこられたご年配の方を中心に、熱い映画ファンが集まりました。
 場内に映画祭のはじまりの挨拶がアナウンスされ、スーと明かりが落とされ、暗闇の中で映写機のカタタタタと回る音が心地よく響き、スクリーンに美しい幻影が映し出されました。

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 フィルムに閉じ込められた吉永小百合の上品な優美さにはっとしますし、きらびやかで溌剌とした大原麗子にも見とれてしまいます。そして大家役のミヤコ蝶々の演技が素敵なこと。
  映画の半ばで、フィルムが飛んで、上映が中断するハプニングがありました。デジタル上映が主流になった現在でもたまに上映が中断するトラブルはあります。この様な場合、修復に手間が掛かる場合がありますが、当映画祭は映写スタッフが直ぐに対応をして上映は再開されました。

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 映画が終わり、会場が明るくなっても、映画の余韻から現実世界に少し戸惑う独特の感覚を味わいながら、みなさん満足した足取りで帰っていかれました。

Text by 吉本千絵

 

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